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「自分を表現すること」と「自分の好きなことを表現すること」のチガイ



「現在の芸術」において、もっとも多くの人が「芸術の中心」に近いものと考えているのは、おそらく「自己表現」だと思います。
でも、その「自己表現」という言葉には、あまりはっきりした規定がないような気がするわけです。


たとえば、自分の姿や顔を絵にすれば、それは「自己表現」と言えるでしょうか?
たとえば、自分の好きな作家と同じようなスタイルで創作すれば、それは「自己表現」と言えるでしょうか?
たとえば、自分が美しいと思うモノをそのまま表せば、それは「自己表現」と言えるでしょうか?

これらは、確かに、「自己表現」ではあると思います。
しかし、「現在の芸術」における「自己表現」と言えるのか?と聞かれた場合には、即答できなくなりそうな気がします。

つまり、これらは、いずれも「表面的な自己」を表してはいても、「本質的な自己」を表していないところがあるわけです。

おそらく、「現在の芸術」における「自己表現」とは、「本質的な自己を表現すること」であって、「表面的な自己を表現すること」ではないでしょう。

そして、その「本質的な自己」とは、どのようなものかと言えば、つまるところ「自分が嫌いな自分」や「自分が認めたくない自分」のような「自分が好きではないもの」を含めた「丸ごとの自分」であるのだと思うわけです。

要するに、「表面的な自己」とは「自分が好きな自分」に限って「自己」と言っているような感じがしてくるわけですね。

 ※「嫌になるくらい好きなもの」とか「どうにも逃れられないほど好きなもの」
  というところまで行くと「本質的な自己」に入ると思います。

もちろん、「本質的な自己」には「自分が好きなもの」も含まれているわけですから、「嫌なもの」ばかりでもないわけで、「嫌いなもの」だけでも「自己表現」とは言えないと思いますが、やっぱり人間ですから、どうしても自分の「好きなもの」については表現しやすいわけですが、「嫌なもの」と成るとなかなか表現しにくいわけで、当然、「嫌いな自分」を表現した作品の方が少なくなるわけですし、「好きなもの」と「嫌いなもの」の両方を表している作品となると、さらに少なくなるんだと思います。

つまり、「現在の芸術」における「自己表現」とは、自分がそこから逃げたくても逃げられないような「性(さが)」のようなものを表現することなんだと思うわけです。
そして、そこには「自分の好きな自分」も「自分の嫌いな自分」も含まれてしまうということなんだと思います。
(これは、本人の考えとはほぼ無関係に含まれているものだと思います)

だから、「そこから逃げたくならないようなもの」では、少し足りないような気がするんだと思います。


「好きなもの」や「センスがいいといわれているもの」や「誰もが美しいと思うようなもの」だけでは、「自己の本質」を表現することはできないような気がしますね。
それらは、決して「逃げたくなるようなもの」ではないですからね。

いくら、『自分が好きなんだから~』と言っても、無駄だと思います。
その位置に「現在の芸術」がないわけですから、無理だということです。

『「美しさ」を使ってはいけない』とは思いません。
『「センス」は捨てなければいけない』という話でもありません。
『「自分が好きなもの」を表現するのなんて「自己表現」じゃないよ!』と言うつもりもありません。

だた、それだけでは、足りないと思うわけです。
たぶん足りないと思います。

どんな人にも、必ず「自分が認めたくない自分」がいるはずです。
そこだけは「パス」して、「自分の中の都合がいいところ」だけを表現していれば、それを「本質的な自己表現」であるとは言えなくなってしまうわけですね。


これを言うと、「芸術」から「楽しさ」を奪ってしまうような気もするんですが、私は「楽しさ」は「芸術の本質」とは少し違うものだと思っていますから、そこのところは、ある程度諦めるしかないと思っているわけです。

「楽しさ」を第一目的にするということは、「娯楽」を目指すということです。
「娯楽」はほかのものでも得られると思いますが、「本質的な自己表現」ができるものは限られています。
もしかしたら、「芸術」しか無いかもしれません。

だから、できれば、『楽しさを二の次にする』という、この「面白みのなさそうな発想」を大切にしていたいと思ってしまうというわけです。


そんなわけで、「自分が嫌な自分」を表現しようと思いますし、「自分が好きなこと」は「嫌になるくらい好き」に成ってから表現しようと思いますし、「みんなが好きなもの」は出来るだけ表現しないようにして行きたいなと。


そんな風に思っているわけです。



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